立山連峰と後立山連峰の間、花崗岩が大きくえぐられた断崖絶壁が続く秘境「下ノ廊下(しものろうか)」。今回は扇沢で車を大町トラフィックに預け、黒部ダムから宇奈月温泉へ抜けました。
もともとこの道は、日本電力が水力発電所建設に向けての調査のために開削したものです。それにちなんで黒部ダム~仙人ダム間は日電歩道と呼ばれています。雪が多く秋まで融け切らず、欅平まで通過出来るのは9月下旬~10月下旬の約1ヶ月間のみ。黒部ダムからしばらくは黒部川に沿って河原の脇を歩き、約2時間後に断崖絶壁の登山道が始まります。美しい渓谷ですが…、何せ道幅が狭いところで50~60cmしかないため、景色を眺める際は立ち止まらないと危険。手の高さに設置された針金は細くてむやみに加重できず、気休め程度にしか握れませんでした。
立山黒部アルペンルートの車の回送を中心に行う大町トラフィック。両駅の横に事務所があり、扇沢駅には専用駐車場もあって便利。JTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行の協定会社。昭和43年創業。
大町トラフィック株式会社 TEL.0120-233-454
歩けど歩けど狭い水平道が続きます。ザックを下ろして休憩できる場所が1時間以上ない…なんてこともあり、体力と精神力、そして歩行技術が伴わないとクリアできない上級者ルートであることを痛感しました。途中には岩が登山道にせり出した部分や、岩がくり抜かれたトンネル状の部分も。そんな岩に頭をぶつけて流血した話も聞くためヘルメットは必携です。
黒部ダムから約20km、時間にして8時間半ほどで阿曽原温泉に到着。8時間半のうち6時間は断崖絶壁の水平歩道、終盤には急登もあり心身ともに疲れました。温泉は1箇所のみで1時間毎に男女入れ替えで入浴でき、20時半以降は混浴タイムとなります。欅平から阿曽原温泉に向かっても約5時間は切り立った水平道を歩かなければならないのが"日本一危険な温泉"と呼ばれる由縁です。
テント泊の翌朝、放射冷却の影響もあって非常に冷え込み、あまりの寒さで目が覚めました。阿曽原温泉から20~30分は急な登りが続き、その後再び水平歩道が始まります。2日目の方が距離は短いものの高度感があり、また、雰囲気のある手堀りのトンネルや滝も多く、最後の最後まで楽しめました。観光客で溢れる欅平駅では安堵の気持ちを抱く反面、「もうおしまいか」と残念にもなりました。
さて、ここからは名物のトロッコ電車です。客車は想像以上に小さく可愛らしく、レトロ感たっぷり。子供のようにはしゃぐメンバーはディズニーランドのアトラクションに乗っているかのようでした。車窓からは黒部峡谷の眺めがよく、乗車時間1時間20分があっという間に過ぎていきました。